自作FPV機で、知っておきたい用語集・前編

私が、以前著作のためにまとめた、ドローンに関する用語集です。ホビイストドローン用ではなく、主に産業用sUAS用に作ったものだが、ホビイスト用 自作FPV機でも、安全に飛行させるために、知っておきたい用語を中心に、引用し、特に自作FPV機で重要な部分は、加筆させていただく。

Connection lost (状態)

UAVが飛行中にNull Pointに入ったり、フレズネルゾーンの欠損により電波到達距離が短くなった場合、一時的に通信が途切れること。sUASにおいては、自立機能を持つので即墜落には結びつかないが、あらかじめ設定されたFatal Optionに移行する。コネクションが復帰した場合、ミッションへの復帰も可能。 自作FPV機の場合は、フェールセーフ機能によって墜落させる 。

2周波GNSS (定義)

GPSとGLONASSなど、複数のGNSSシステムを同時受信し、位置情報LOSTに対する冗長性を持たせ、位置情報精度の向上やFlyawayなどに対する安全性を向上させる機構。

Anti-Jello (機能)

機体の細かい振動によりカメラなどのイメージセンサーで取得した動画やイメージが波を打ったり溶けているように見えるのを防ぐため機体とギンバルをフローテイングマウントする機構。CMOSセンサーを用いるイメージセンサーは影響を受けやすい。また、NDフィルターを用いて露出時間を長くすることもAnti-Jello現象に対して効果的な方法である。

C (単位)

クーロン値。1秒間に1アンペアの電流によって運ばれる電荷(電気量)が1クーロンとなる。バッテリーの放電性能の指標として用いられる #例1300mAHのバッテリーが30C放電した場合1秒間に39Aの電流を放電できる。

CCW (定義)

回転方向の定義。Counter Clock Wise反時計回り。

CW (定義)

回転方向の定義。Clockwiseは時計回り。

EO Camera (名称)

Electro-Optical Camera 人間の可視領域に合わせたカメラと大幅にダイナミックレンジを広げたカメラの場合がある。

ESC (名称)

Electric Speed Controller. それぞれのモーターの回転を高速にon/offを繰り返すことによって精密にコントロールする。On/offの周期をSwitching frequencyといい、高いSwitching Frequencyほど精度の高い制御が出来る。伝統的なヘリコプタータイプでは、常にピッチの変化によるロードの変化が生じても一定の回転数を維持するガバナーモードが使用される。

Fatal Option (機能)

Connection Lostなどの状態になった場合、あらかじめどのような動作をUAVにさせるかを決めておく機能。RTHはその代表的な選択肢。フェイルセーフ設定もその一つ。

FC (名称)

Flight Controller。オペレーターやオートパイロットの入力に対し機体の姿勢情報や推力制御情報、各種センサーからの情報に基づき制御するコントローラー。UAVの中枢機能の一つ。ペイロードコントローラーと統合されている機種もある。

Fixed Wing (分類)

固定翼機の意味。少ないエネルギーで短時間での広範囲観測が可能だが、離着陸時や対象物の接近など、フライトミッションに制限がある。

Fly away (状態)

UAVが制御不能状態で飛び去ること。GNSSの受信状況が悪かったり、飛行高度での突風が機体性能をこえる強さの場合起き得る最悪のシナリオ。

FPV (定義)

UAV本体のカメラからダウンリンクされた映像を元に、あたかもその機体に搭乗して操縦しているような、環境を提供する、1人称視点のリアルタイムイメージのこと(FirstPersonView)

または、そのイメージを利用し、機体の操縦を楽しむことを目的とした機体。FPVドローン。

GNSS (名称)

GlobalNabigationSateliteSystem.原子時計を搭載した複数の衛星を利用して三角測量によって地球上の位置を高精度に特定するシステム。最低でも4基の衛星からの情報が必要。UAVの現在位置特定に利用されている。

IMU (名称)

慣性航法装置。産業用sUAS以外で多くのホビイストドローンでは呼称だけで厳密に慣性誘導制御をしているものはあまりない。

IR Camera (名称)

Infrared Ray Cameras 赤外線カメラで、被写体の発熱を画像として表示したり記録できるカメラ。

Killスイッチ (機能)

飛行が継続した場合、第三者や、その施設にダメージを与えることが想定される場合のオペレーターが行う意図的な墜落操作。sUASは専用のスイッチが設けられている場合が多い。ホビイスト用自作FPV機では、フェイルセーフ機能で、意図的に墜落させる設定をする。

KV (単位)

モーターに1Vの電圧を印加した場合の回転数。コイルのターン数や永久磁石のクオリテイによって変わり、モーター選択の指標のひとつ。

LiPo (名称)

リチュウムイオン電池の一種。電解質に重合体(ポリマー)を用いた二次電池。定格電圧は3.7V。軽量でエネルギー密度が高いため広くUAVの動力として用いられる。

18650 Li-ion

テスラの電気自動車に使われる、シリンダルcell。18650はcellのサイズを表し、18mm*650mm。テスラ・モデルSでは6510本の3400mah/18650cellが床下に組み込まれている。

Mission abort (機能)

オートパイロット飛行時に”Flyaway”などの深刻な事態が想定される場合、オペレーターの判断でオートパイロットを中断し、速やかに着陸させること。sUASの中には機能として実装されている物もある。

No-fly-zone (定義)

探査範囲内で上空を飛行してはならない場所や、法律によってUAVの飛行が禁止されている場所。

Nullポイント (概念)

ホイップアンテナの真上に生じる通信が途切れるポイント。フライトプラン作成の際に考慮すべき事項の一つ。

OSD (機能)

OnScreen Display テレメトリーでオペレーターに送られる情報をオペレーターのモニターなどに表示する機能。RSSIやバッテリー残量情報、スピードや緯度経度情報など、様々な機体情報がリアルタイムにオペレーターのモニターに表示される機能。

PID設定 (定義)

x,y,z軸それぞれのジャイロセンサー、加速度センサーの入力に対しPropotional,Integral,Derivative値を設定し、機体の挙動を設定する。エンドユーザーがこれらの値を再設定するには極めて専門的な知識を要するため、通常は変更することはない。ホビイスト向けの自作FPV機などでは、パラメーターを調整して、機体の挙動変化を楽しむことそのものも楽しみの一部となっている。

RFノイズ (定義)

ESCやスイッチングレギュレーターが発生する電磁ノイズ。コントロール信号が72Mhz帯から2.4Ghz帯になったことで、この種のノイズによるシステムの誤動作は劇的に改善されシステムとしての信頼性が向上した。

RSSI (機能)

Received Signal Strength Indication UAV側の受信機での送信機からの電波の受信状況を通知するテレメトリー情報の一つ。UAVがコントロールシグナルの到達圏外に達しないための重要なテレメトリー情報の一つ。

RTH(Return To Home) (機能)

フェールセーフ時のオプションの一つ。機体とオペレーターの通信が途切れた場合、離陸時に取得したGNSS位置情報に基づき自動的に帰投する機能。GNSS情報の取得が不完全な場合漂流事象が起こるリスクもある。

RTK (名称)

Real Time Kinematic 位置の分かっている基準局が発信する補正データを利用してGNSS計測結果の誤差を修正して精度を高める技術。測量用途でGCPの取得が難しい環境でも信頼性の高い一定の高精度を確保しながら3次元データの取得が出来る。

sUAS (定義)

高度に自動化された小型無人偵察システムを指す。操作タブレットや、ベースステーション、オートトラッキングアンテナ、UAV等からなるシステム。SmallUnmanedAircraftSystem.。

ホビイストドローンと外見は似ているが、ミッションに応じてペイロードを換装し、データ収集を主な目的とした自立型ロボットシステム。ホビイストドローンをベースとしたUASに比べ、マップベースコントロールで操縦する、ジョイスティックを使わないコントロール方法を採用するため、オペレーター養成時間がはるかに短く済む。ドローンパイロティングとカメラコントロールが高度に統合化されているため、オペレータが複数の機体を一人でコントロールすることが可能なものが多い。

UAV (定義)

Unmanned Aerial Vehicle sUASの定義の中では飛翔体そのものを指す。

UHF/SHF帯電波 (定義)

主にsUASで用いられる、1.2Ghz,2.4Ghz,5.8Ghz帯(周波数によって無線免許が必要)

Unit Imperial (定義)

フィート、マイルなど主にアメリカで使われる単位体系。

Unit Metric (定義)

メートル法による単位体系。

UTC (定義)

Universal Time, Coordinated のこと。セシウム原子時計によって刻まれる国際原子時をもとにして常に正確に保持されている。日本時間はUCT+9(h)。GNSSシステムの設定で重要

VTOL (分類)

Vertical Take Off and Landing の意味。垂直離着陸が可能なタイプの機体をVTOL型と分類する。狭い範囲での離着陸や対象物への接近性に優れる反面、機構が複雑なため機械的信頼性に課題が残る。

アウトランナーモーター (名称)

ブラシレスDCモーターの1形態で、コイルが中心から放射状に固定配置されていてモーターのアウターベルが回転する構造のモーター。アウターには永久磁石が組みつけているため高いフライホイール効果を生み、ダイレクトドライブ方式で用いられる。インランナータイプに比べ放熱性、高トルクの点で有利。

アンチトルクローター (名称)

伝統的なメインローターを持つヘリコプター型のVTOL機で、メインローターの発生させるトルクを打ち消し、ヨーコントロールを行うために可変ピッチ機構の付いたローター。ベルトドライブなどで、メインローターの約5倍の回転数で回転している

オーダー66 (定義)

映画”スターウオーズ”のエピソードから定義された脅威。ファームウェアに悪意のあるコードが含まれる場合、オペレーターが無意識のうちにハイジャックされてしまうリスクのこと。ファームウェアにより飛行禁止エリアが設定できる機種は、その逆の設定も可能であるため、不正なファームウェアのインストールにオペレーターは常に注意を払う必要がある。

オートパイロット (定義)

あらかじめwaypointを設定しUAVはGNSS情報を基に自動的に航行させること。風によるドリフトの修正や姿勢/飛行高度制御は自動的にUAVが行う。

オペレーション高度 (定義)

改正航空法によりUAVは高度150m以下で飛行しなければならないが、目的の解像度などから150m以下で任意の飛行高度を設定し飛行させる高度のこと。

改正航空法 (法規)

平成27年12月10日に施行された200g以上の無人航空機の運用に関する法律。遊興用・産業用含めすべての無人航空機に係る法律。

角速度センサー (名称)

規定の軸方向に向かってどれくらい傾きが生じているかを計測するセンサー。X軸y軸z軸にそれぞれ対応して実装されている。

加速度センサー (名称)

規定の方向に向かってどれくらいの加速度がかかっているのかを計測するセンサー。X軸y軸z軸にそれぞれ対応して実装されている。

可変ピッチ(機構) (機能)

プロペラの回転中にピッチ(プロペラブレードの迎角)を随時変更し、推力を調整する仕組み。

慣性航法 (機能)

あるタイミングにおけるUAVの位置データを基準にそこからどれくらい移動したかをジャイロスコープと加速度センサーから求め、予定航路からのずれと、予定航路に復帰するための操舵量を積分計算し予定航路に復帰するように計算を基に常に補正を行う航法。既知の位置データから遠さかるほど誤差が大きくなる。

ギアダウンユニット (名称)

高回転型コアレスモーターとともに使われる。モーター回転をギアを使って減速させ、トルクを稼ぐ。ダイレクトドライブに比べ、論理的にはレスポンスにレイテンシーが生じるがフライトコントローラーが自動的に吸収するので、オペレーターが意識することは、あまりない。

機体オリエンテーション (定義)

UAVをLoSで、ステイックコントロールする際に重要な要素。機体がどちらを向いているのか、傾きはどれくらいか、など経験により習得する要素が多い。マルチコプターはその形状から前後左右がわかりづらく、機体オリエンテーションのために、LEDイルミネーションや、機首を示すカラーリングを行う。それでも、夕方の西日などで機体オリエンテーションを失う場合があり、最悪墜落に繋がるリスクがある。

用語集後編へ続く

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