3軸トゥールビヨンを持つゼンマイ時計を作る。

これは、私が今までに購入した最も高価なSTLデータだ。データだけの値段は79ドルだったと思う。

大抵の場合はSTLデータは購入しないのだが、この時計には何か不思議な魅力があった。それと丁寧な取り扱い説明書やBOMリストがついていて、それを読みながら、実際に動く所を想像し、珍しくSTLデーターを購入した。ギアやカンギ車、脱進機などのSTLデータはもちろんだが、その丁寧な組み立て説明書がデーター以上にモチベーションを上げてくれるものだと、改めて感心した。

ゼンマイ時計の魅力

ゼンマイ式の時計は、ゼンマイがほどけるスピードを、テンプとカンギ車、アンクルからなる脱進機で、正確に一定間隔で刻んで、その力を時針、分針に伝えて時刻を刻むのが大まかな仕組みだ。

しかし、そのゼンマイがほどける間隔を正確に刻むガバナーが、重力の影響を受け、時刻の正確さに悪影響を及ぼす。 特に、腕時計などでは、姿勢や、手の動きにより精度に悪い影響を与える。

テンプ、カンギ車、アンクルが地球の中心、つまり地面に対する角度によって早くなったり遅くなったりするのが原因である。

3軸トゥールビヨン

3軸トゥールビヨンはその影響を打ち消すために脱進機自身を360度あらゆる角度に回転させ、重力の影響を打ち消す仕組みだ。

非力なゼンマイの力で脱進機全体を回転させる必要があるために、時計の効率的には、高性能とは言えないが、いかにもギミックの塊のような、非実用的な面白さがある。(実際に同じ機構を搭載した腕時計も存在し、数千万円もするものもある)

この音がたまらない

このモデルの魅力

このデーターキットは、FDM3Dプリンターで造形するようにできているため、機械としてのトレランスは、組み立てやすさとの妥協をしているので、実用的な時計として利用するのは難しいだろう。

しかし、それぞれのパートでベアリングを使ったりするため、専用のジグが含まれており、ピタリと勘合するようにできている。具体的には精度を要求するパーツは、標準パーツに対して±2ステップずつサイズを調整された同じパーツのSTLが含まれている。

組み立て

親切でわかり安い説明書のおかげで、組み立ては特に難しいことはない。最新のデータは、ハイトルクタイプに設計が変更されており香箱から脱進機につながるギア比が変更されているので、最初からハイトルク版で組み立てるとよいだろう。

すべての機構が丸見えなので、使用するフィラメントの色を選ぶのも楽しみの一つだ。

完成してからは、懐かしい脱進機の小気味よい音と、機能美を十分堪能できます

残念な点

パーツによって、ノズルのオリフィス径が指定されており、すべてのパーツを造形するには、ノズルを変更する必要がある。この点で制作の難易度を上げていると思った。

部品点数が多く、多くのパーツで造形設定が細かく設定されているため、なかなか部品がそろわず、組み立てに入るまでに、相当の時間がかかった。しかしこれは修行と思って丁寧に行った。おかげで多くの効率化(手抜きスキル)が向上したことに感謝している。

脱進機を動かすリング状のラックギアが平歯車と摺動しているため、この部分の渋さが駆動力の大部分を消費してしまう。リングラックギアと平歯車を最適化すると、稼働時間がかなり長くなると思う。

リングラックギア

PLAパーツでこれだけの部品を組み合わせた時計が、経年変化をどれだけ耐えられるのかも心配の一つである。

Tourbillon Mechanical Tri-Axial

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